君に捧げる一途な愛

他の会社は知らないけど、うちの会社にはイケメンの人が多い気がする。

特に目立つ人が二人いる。
一人は営業部の立花翔真さん、社長の息子で次期社長になる人。
もう一人は商品企画部の高柳千尋さんだ。

数えるぐらいしか見たことはないけど、この二人は立っているだけで華があるというかイケメンのオーラが出ている気がする。
この二人が太陽なら、小笠原課長は月といった感じだろうか。

小笠原課長は社内で目立つということはないけど、塩顔イケメンで隠れファンがいるという噂話を聞いたことがある。
でも、直属の部下の博美は小笠原課長にいい印象は抱いてない。

「あぁ、木下さん。ありがとう」

頻繁に接することのない私の名前を覚えていてくれたことに嬉しくなる。

入社して数ヶ月経った頃、博美から愚痴をよく聞かされていて、堅物で真面目で仕事が出来る小笠原課長はどんな人なんだろうと興味を持っていた。

しばらくして、社内イベントで初めて小笠原課長に会う機会に恵まれた。
実際に話してみると、小笠原課長は私の想像していた人物像より遥かに優しくて柔らかな人だった。
いつしか、興味があるという対象から気になる存在へと変化していった。

小笠原課長になかなか会える機会は少なかったけど、偶然見かけたり会えたりすると嬉しくなった。
その気持ちの答えが分からないわけではない。
でも、答えを出したところでどうこうしようとは思わない。
見ているだけで十分だ。
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