君に捧げる一途な愛

「志乃の分は俺が買うよ」

そう言って私の手から虹色のキーホルダーを取る。

「他にはもう気になるものはない?」

私はキョロキョロと周りを見回す。
気になるものと言えば、さっき見ていた真っ白の手のひらサイズのアザラシのぬいぐるみ。
あのカチューシャと同じ種類のアザラシだ。
さすがにこの年でぬいぐるみが欲しいとは言えない。
今も小学生ぐらいの女の子がそのぬいぐるみを手に持って親の元に向かっていたし。

「私は大丈夫です」

「そうか。じゃあ、先にレジに行ってもいいよ。俺はもう少し見たいものがあるから」

「分かりました」

私は青のイルカのキーホルダーを手にレジに向かう。
バッグから財布を出して支払いを済ませた。
キーホルダーを受け取り、ショップの外で政宗さんを待っていたら誰かの視線を感じた気がした。

「?」

周りを見回しても、特に見知った人はいない。
気のせいだったのかと思っていたら、紙袋を手に持った政宗さんがやってきた。
あれ、キーホルダーはもう少し小さな紙袋に入っていたはずなんだけど。
不思議に思っていたら、その紙袋を渡された。

「えっ」

「はい、どうぞ。これ、欲しかったんじゃないの?」

そう言われて紙袋の中を見てみたら、私が気になっていた手のひらサイズのアザラシのぬいぐるみが入っていた。

「どうしてわかったんですか?」

「志乃の視線かな。ずっと見ていただろ」

私の視線で気づかれているなんて思わなかった。
< 112 / 219 >

この作品をシェア

pagetop