君に捧げる一途な愛
「コーチの指導は厳しかった。最初は全然ついていけなくて挫折しそうになったけど、仲間に励まされてどうにか続けることができた。それもあって、俺の身体も痩せていったんだ」
「そうだったんですね」
きっと、政宗さんはたくさん苦労したんだろう。
私は子供の頃、ピアノ教室に通っていた。
茅乃も一緒に習っていたけど、ピアノの先生が年配で厳しかったこともあり彼女はすぐに辞めた。
親には「ピアノは性に合わない」と言って、バイオリン教室に通い出した。
私としては茅乃と離れられたし、梨音ちゃんとも仲良くなれたこともあり、練習を頑張ることができた。
茅乃と一緒にいるだけで苦痛だったので、ピアノ教室が私の息抜きの場所のひとつだった。
「河さんは俺の二年先輩で、ミニバスのキャプテンをしていてすごい選手だったんだよ。河さんの代と俺と幸也の代のチームは全国に行ったんだ」
「全国大会なんてすごいじゃないですか!」
「まあ、運が良かったのもあるけどな」
私は椅子に座っていたので、河村さんがどのぐらいの身長なのかは分からなかったけど、足も長くて体格がよかったと思う。
「働き出してからも、仲間内で体育館を借りてバスケをしていたんだ。最近はあまり行けてないけど」
「そうなんですね。政宗さんがバスケする姿、見てみたかったな」
思わず口に出していた。
絶対にかっこいいはずだ。
「今度、見に来る?」
「いいんですか?行きたいです」
「志乃が行きたいなら全然いいよ。また練習するときがあったら教えるよ」
「はい、お願いします」
私は前のめりで返事をしていた。