君に捧げる一途な愛
二度と茅乃に関わりたくなかったから、私は自分の行き先は告げなかった。
もちろん、お父さんにはちゃんと口止めをして。
「こんな偶然があるのね」
茅乃は心底嬉しそうに笑う。
再び、おもちゃを見つけたように。
そして、私の隣に立っていた政宗さんに視線を向けた。
「もしかして、お姉ちゃんの彼氏……ですか?」
パッと私の腕を離し、政宗さんの前に立って上目遣いで聞く。
私は嫌な予感がしていた。
茅乃が政宗さんに興味を持ったのかもしれない。
「そうだが」
「うわぁ、やっぱり。かっこよくて素敵な人ですね。お姉ちゃんとどこで知り合ったんですか?」
「茅乃、やめて」
私は茅乃の腕を掴み、政宗さんから遠ざけた。
あの時の二の舞はごめんだ。
「痛っ」
茅乃は目を潤ませ、私が掴んだ手をさすっている。
そんなに強い力で掴んではいないのに、同情を引くように政宗さんに訴えかける。
「お姉ちゃん、いつもこんな風に私に意地悪をするんですよ。でも、私はお姉ちゃんのことが大好きだから我慢できるんです」
私は茅乃の言葉に絶句した。
私がいつ、意地悪をしたというのだろう。
「お姉ちゃん、少し時間ある?」
「えっ」
「だって、せっかく会えたんだし話がしたいなと思って」
「悪いけど、私は話すことはないから」
せっかく離れられたのに、また茅乃の呪縛に囚われるのだけはごめんだ。
「ホントにお姉ちゃんは意地悪。ねぇ、彼氏さんもそう思いません?」
茅乃は口許に笑みを浮かべ政宗さんに声をかけた。