君に捧げる一途な愛

「別に志乃が意地悪だとは思わない。それより、君にも連れがいるのに放置していていいのか」

政宗さんは茅乃の後ろにいる男性に視線を向けた。
そこには所在なさげにこちらを伺っている男性がいた。
茅乃の彼氏……だよね。

「あー、大丈夫です。ねぇ、少し話をするかそこで待ってて。それより」

茅乃は一緒にいた男性に声をかけたあと、私のそばに来て耳打ちした。

「あの彼氏、いつから付き合ってるの?」

「そんなの茅乃に関係ないでしょ」

「お姉ちゃんの癖に強気じゃん。彼氏イケメンだよね。私、気に入っちゃった。ちょうだいよ、あの人」

「ちょうだいって、政宗さんは物じゃない」

私は怒りで大きな声が出た。
それだけ茅乃の言葉が許せなかった。

「へぇ、いつも私に譲ってくれてたのに……。お姉ちゃんがそんなこと言う男、ますます欲しくなったわ」

茅乃は何を言っているんだろう。
目の前にいるのは血の繋がった妹なのに恐ろしくなる。
茅乃は私の物をなんでも欲しがる癖はまだ直ってなかったみたいだ。
でも、今までの私とは違う。
大切な人は自分で守らないといけない。

「私は絶対に譲らない。もう、我慢するのは止めたの」

「でもさぁ、地味なお姉ちゃんと私を比べたら政宗さん、だっけ?あの人も私の方を選ぶんじゃないの?前の彼氏みたいに」

茅乃はそう言って嘲笑う。
変わりたいと思った私の気持ちを茅乃は簡単に踏みにじってくる。

私は当時のことがよみがえり、なにも言えなくなった。
唇を噛み、俯いていたら政宗さんの腕が私を優しく包み込んだ。
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