君に捧げる一途な愛
茅乃と一緒に居た男性はなにも言わず、唇を噛みしめていた。
好きな人にこんな顔をさせるなんて可哀想だ。
「私はお姉ちゃんと遊びたかった」
茅乃がポツリと呟いた。
「いつもお姉ちゃんは私のことなんて見向きもしないで友達と遊んでいた。私はお姉ちゃんと遊びたくて、構ってほしかったの」
私と遊びたかったなんて初耳だ。
だからといって、私の物を奪っていい理由にはならない。
「シスコンを拗らせたゆえの言動だったってことか……それにしてはやり過ぎだが」
政宗さんがため息交じりに言う。
「茅乃、私の物を奪って気を引こうとしなくても、茅乃が遊びたいって言ってくれたら一緒に遊んだよ。だって、私たちは姉妹でしょ」
「ご、ごめんなさい」
茅乃は目に涙を浮かべ、素直に謝罪した。
初めて見た妹の泣く姿に、茅乃も苦しかったのかなと胸が痛んだ。
「分かってくれたらいいよ。これからは、ちゃんと自分のことも大事にして」
「うん。お姉ちゃんは、ちゃんとお姉ちゃんだけを見てくれる人を見つけたんだね」
「えっ?」
「お姉ちゃんが大学の時に付き合った男、アイツは最低だよ。ちょっと私が言い寄ったらコロッと寝返って。あんな奴と別れて正解だよ」
まさかの告白に驚きを隠せない。
「でも、あのとき茅乃は相性がよかったとか言ってたよね?」
「嘘だよ。あの先輩とはしばらく付き合って別れたけど、身体の関係はないよ。お姉ちゃんがあんな男に未練がないように仕向けただけ」
「要は、志乃の妹はその男を試したって訳か。それで、まんまと引っかかったから志乃に嘘をついたんだな」
政宗さんが呟いた。