君に捧げる一途な愛

今日はピッキングが終われば、そのまま退社してもいいと部長に言われていた。
まだ残っている社員の人に「お疲れさまでした」と声をかけ、バッグを手に事務所を出た。

敷地を歩いていたら本社から出てきた人に見知った顔を見つけて「あっ」と声がもれる。
私は小走りで駆け寄って声をかけた。

「梨音ちゃん!」

「あ、志乃ちゃん。お疲れさま」

ふわりと柔らかな笑顔を浮かべるのは河野梨音ちゃん。
私より一歳年上、商品企画部で働いている。
モカブラウンの髪の毛が肩で揺れ、パッチリ二重が印象的な綺麗な人。
私と梨音ちゃんは、学校は違ったけど中学の時から一緒のピアノ教室に通っていた。
前後の時間帯で何度か話すうちに仲良くなり、私は優しいお姉ちゃんが出来たみたいで嬉しかった。

私が中三の時にピアノ教室を辞めたので、自然と交流はなくなってしまった。
それが、まさか同じ会社で再会するなんてすごい偶然だ。

その再会の仕方が特殊だった。
うちの会社は社内イベントの一環で、二ヶ月に一度シャッフルランチを実施している。
それは他部署の社員とご飯を食べながらコミュニケーションをとるという目的で行われていた。

私は入社一年目の秋に巡ってきた。
長年、勤務していてまだシャッフルランチをやったことのない人がいる中、まさか私が選ばれるなんて夢にも思っていなかった。
でも、私にとって運命の出会いがあったんだ。
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