君に捧げる一途な愛
「妹とも和解したみたいでよかったわ。心なしか志乃の表情も柔らかくなった気がする」
「えっ、そう見える?」
「うん。前はどこか自信なさげで笑っていても心の底から笑えてないのかなって思っていたけど、憑きものが取れたようないい表情になっているわよ」
全く自覚はなかったけど由香に言われ、箸を持っていない左手で顔を触ってみる。
いい表情か……。
「まあ、志乃にそんな表情をさせてくれたのはダーリンが大部分を占めていると思うけど」
「もう、からかわないでよ」
ニヤリと口角を上げて笑う由香にジト目を向ける。
すぐ話をそっちにもっていくんだから。
不意に女子社員の騒ぐ声が耳に届いた。
「あっ」と由香が声を出し、食堂の入口に視線を向けた。
私もそれにならい、そちらを見ると政宗さんと営業部の立花課長の姿があった。
二人は談笑しながら食券を購入している。
女子社員がザワついている原因はあの二人みたいだ。
「珍しい組み合わせね、二人一緒にいるなんて。確か、ジュニアは三十歳で小笠原課長の方が年上じゃなかったっけ?」
由香がジュニアと呼ぶのは立花課長。
社長の息子だからだ。
「そうかも。三十一って言ってたから」
年齢も部署も違うので接点なんてなさそうだけど、仲がいいのかな。
政宗さんが職場で親しく人と話している姿を見たことがないので新鮮な気持ちだ。
なんとなく目で追っていると二人は空いている席に座り、手を合わせたあとに食事を始めた。
政宗さんは離れた場所に座っていて、こちらから見えるのは背中だけだから私には気づいていないみたいだ。
「やっぱり人気があるのね」
由香が頬杖を付きながら言う。