君に捧げる一途な愛
「あの人、海外事業部のエリカ様だわ」
「エリカ様?」
「うん。九条さんが言ってたの。うちの部署に綺麗で仕事が出来るけど、やや性格のキツイ女子社員がいて何人若手社員を泣かせたか分からないって」
へぇ、そんな人がいたんだ。
全然知らなかった。
物流部は本社と離れているので、どこに誰がいるというのが分からない。
私は社交的ではないので他部署に知り合いは多くなくて、話せるのは同期ぐらいだ。
だから、こうして社員食堂でご飯を食べるのはいろんな社員の人が見れるので新鮮な気持ちになる。
「あっ、エリカ様が志乃のダーリンと話をしてる」
下を向いて食べ終わった弁当箱をしまっていたら、由香の声に反応して顔を上げた。
席が離れているので、こちらからは何を話しているのか分からない。
だけど、政宗さんとエリカ様が会話しているのは見えた。
別に女子社員の人と話をするのは普通のことだけど、なぜかモヤモヤする。
「もう、そんなことで落ち込まないの。志乃だって同期の男子と普通に話をするでしょ。それと同じだって。本当に志乃ちゃんは可愛いんだからー」
由香が私に抱き着いてきてお腹をくすぐってくる。
「ちょ、ちょっと由香っ。くすぐったいからやめて」
身をよじらせながら抗議していたら、呆れた声が耳に届いた。
「お前ら、こんなところでなにやっているんだよ」
「なにって、愛情表現だけど」
「時と場所を考えろ、バカ」
そう暴言を吐くのは同期の西田瞬だ。
面倒見がよく、楽しいことが大好きで、同期会ではよく幹事をやってくれている。