君に捧げる一途な愛

「ねぇ、あれっていつもなの?」

智美さんが比嘉部長に耳打ちする。

「あれって?」

「小笠原さんに声をかけてる子はいつもあんな感じなの?」

「あー、そう言われたら最近はよく話しかけてる気がするな」

比嘉部長は顎に手を当てながら答える。

「それは仕事中もってこと?」

「そうだな。仕事中は質問したりよく政宗に声をかけている」

二人のコソコソ話している声が私の耳にも届いた。

「じゃあ、仕事中は仕事の話しかしてないのね?」

「そりゃそうだろ。それに、あの政宗が女子社員の世間話に付き合うと思う?」

「それもそうね。安心したわ」

比嘉部長との話を終わらせた智美さんが私に声をかけてきた。

「志乃ちゃん、あの子のことは気にすることはないよ。小笠原さんは興味ないみたいだし」

「はい。ありがとうございます」

きっと、私のことを気にして比嘉部長に聞いてくれたんだろう。
気にするなと言われても、彼氏にあんな風に女の人が話しかけるのは嫌だなと思ってしまう。
由香に気にするなと助言してもらったのに全然ダメだ。
私は気をまぎらわそうとビールに口をつけた。

「志乃りん、これ美味いっすよ」

そう言って、私の斜め前に座っていた合田くんが串に刺さった豚肉の梅肉大葉巻きをすすめてくる。
私はお皿に乗っていた串を手に口に運んだ。

「んー、確かに美味しい。梅肉と大葉がいいアクセントだね」

「でしょ!マジ美味いっすよね。志乃りん、まだ食べますか?」

「あと一本注文しようかな」

「俺がついでにやっときます」

合田くんは他の人の注文も聞き、店員を呼ぶと手際よく伝えていた。
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