君に捧げる一途な愛
さっきまで感情的になっていたけど、合田くんの登場によって頭が冷えた。

「なによ、こんなところに連れてきて」

「朝倉、お前なんなの?マジで胸くそ悪いわ。さっきから聞いてたら最低なことばかり言ってるの、気がつかない?お前の好きな人が木下さんと付き合ってるからって、しょうもないことで脅してどうすんの?本人が黙ってることを選択してるのにお前が勝手に話す?しかも譲れって?あり得ないだろ」

合田くんはバカにしたように鼻で笑い、畳み掛けるように言う。

「世界は朝倉を中心に回ってる訳じゃないぞ。てかさあ、木下さんがお前に言われたからって『はい、譲ります』って別れるわけないじゃん」

「そんなの分からないじゃない。それが原因じゃなくても別れることはあるし、人の気持ちなんて変わるでしょ」

「人の気持ちは変わったり別れることもあると思うけどさ、もし木下さんが小笠原課長に朝倉に脅されたって話をしたらどうすんの?」

「えっ」

「えっ、じゃねぇよ。譲れとまで言われた木下さんがお前のことを黙っているとは限らないじゃん。まず最初に相談するだろ。こんなことを言われたって。朝倉がやらかしたことを聞いた小笠原課長から間違いなくお前は軽蔑されるぞ。自分の恋人に害を及ぼす人物として認定され、今ある部下というポジションは保てないだろうな」

「私そんなつもりじゃ……」

朝倉さんはそこまで考えが至っていなかったのか、顔色を悪くさせる。
確かに私が話さない可能性はゼロではない。

私は黙って二人のやり取りを見つめていた。
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