君に捧げる一途な愛

「朝倉の気持ちは朝倉のものだ。でも、それをぶつける相手は木下さんじゃない。お前が好きだっていう小笠原課長だろ。そこを間違ったらダメだ。木下さんにごちゃごちゃ言ったところで、なにも解決しない。冷静に考えたら分かるだろ?」

朝倉さんはその言葉に静かに頷くと、合田くんは彼女の頭をポンポンと撫でていた。

普段見る、緩さ全開の合田くんはどこへやら。
こんなにもちゃんとしている人なんだと驚きを隠せない。
朝倉さんは合田くんに言われて反省したのか、バツの悪そうな顔をして私をチラリと見る。

「失礼なことを言ってすみませんでした。これでいい?」

「ダメだ。余計なことを言いふらさないと約束しろ。お前、二人が付き合っていることを話すとか言ってただろ」

合田くんに言われ、朝倉さんは再度私に向き直す。

「二人のことは他言しません。私が浅はかでした。ごめんなさい」

朝倉さんは言い終わると、「失礼します」と言ってのれんをかき分けて逃げるようにその場をあとにした。

「志乃りん、色々と申し訳ないっす。あいつ、あれでも反省してると思うので」

合田くんはふわりと揺れるのれんを見ながらため息をついた。

「別に謝罪してもらったから朝倉さんのことはもう大丈夫だよ。合田くんに助けられたね」

「とんでもないっす。いやー、同期の清水からいろいろ朝倉のことを聞かされてたんですよねー。前々から朝倉が小笠原課長のことを好きだって言ってたらしくて。この前、朝倉は清水と水族館に行った時に偶然志乃りんたちを見かけて、それはもうすごい形相で睨み付けてたって」
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