君に捧げる一途な愛
どうしたんだろう。
花火大会に行ったなら行ったって梨音ちゃんは素直に言うと思う。
でも、言いにくそうに頬を染めて目を泳がせている。
こんな表情をするということは、恋愛関係に鈍い私でもピンとくる。
もしかして……。
「梨音ちゃん、彼氏できた?」
「いや、うーん、どうかな……」
「どうかなってどういうこと?」
言葉を濁し、さっきの赤い顔から一転、複雑そうな表情を浮かべる梨音ちゃんを見て何か訳ありなのかもしれないと思った。
この話はあまり触れられたくないのかな。
私だって博美に恋愛関係の話を触れられるのは困るし。
私は空気を読んで、話題を変えることにした。
「ま、いっか。そういえば、梨音ちゃんに教えてもらったジュース屋さんあるじゃん。私もすごいお気に入りでよく買っているんだよね」
「あ、美味しいでしょ。私は毎週金曜に買っているんだ」
「へぇ、そうなんだ。私、週三は行ってるかも」
「それは多くない?」
「確かにー」
そんなことを話していたら駅に着いた。
「じゃ、私はあっちだからまたね」
「うん。お疲れさま。またね」
笑顔で手を振る梨音ちゃんを見てホッとした。
とっさに話題を変えてよかった。
気まずいまま、別れるのは本意じゃないし。
腕時計を確認し、私は急いで改札口へ向かった。