君に捧げる一途な愛

由香のアドバイスを思いだし、どうにか気持ちを落ち着けようとする。
だけど、好きな人のことは自然と目で追ってしまうわけで、女性が政宗さんに話しかけるたびにモヤモヤしてお酒の量が増えていった。
情けないことに、私には由香のアドバイス通りのスルーは出来なかった。


ふわふわした足取りで智美さんについていくと、車道に一台のタクシーが止まっていた。
そばには比嘉部長の姿があった。

「大ちゃん、志乃ちゃんを連れてきたよ」

「おー、サンキュー。いま、一台つかまえたところ。志乃ちゃん、これに乗って帰って」

開いていたタクシーの後部座席のドアから乗るように促された。
智美さんに背中を押され、乗ろうとしたらそこにはすでに先客がいた。

「えっ?」

「志乃、早く乗って」

政宗さんに手を引かれ、私はタクシーに乗り込んだ。

「部長、比嘉さん、ありがとうございます。お先に失礼します」

「おー、気を付けて帰れよ。志乃ちゃん、お疲れさん」

「あっ、お疲れさまでした。智美さんもありがとうございました」

「いえいえ、また来週ね。小笠原さん、よろしくお願いします」

ドアが閉まり、タクシーはゆっくりと動き出した。

「真っ赤だな」

アルコールでほどよく火照った頬に政宗さんの手が触れた。
その手は熱を吸収していくみたいに冷たくて気持ちいい。
私は、政宗さんの手に自分の手を添えて目を閉じた。

「どうした?気分が悪いのか?」

「いえ、政宗さんの手が冷たくて気持ちいいんです」

目を閉じたまま、そう口にすると政宗さんはため息をついた。
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