君に捧げる一途な愛

『俺が洗い物するから志乃はテレビでも見ていて』と言われたんだ。
最初は断ったけど、政宗さんが譲らなかったのでお言葉に甘えてしまった。

料理は得意ではないけど洗い物なら出来ると言って、いつも率先してやってくれる。
いい旦那さんになりそうだな、なんてぼんやり考える。
きっと政宗さんと結婚できたら幸せだろうな。
そんな未来を考えるほど、私は政宗さんのことが好きになっている。

不意に正面に影ができ、「えっ?」と思ったときには政宗さんの手が私の両頬を包み込んでいた。

「ひゃっ」

「なに考えてるんだ?」

あまりの手の冷たさに身体が震えた。
その冷たい手はなに?

「冷た……、お湯で洗わなかったんですか?」

「お皿とかは湯で洗ったよ。でも、志乃がぼんやりしてたから刺激を与えようかなと思って、最後に水で手を洗った」

いたずらっ子の顔をして手をヒラヒラさせた。

「そんな刺激要らないです」

私が頬を膨らませると「ごめんごめん」と笑いながらソファに腰を下ろす。

「洗い物、ありがとうございます」

私は冷たくなった政宗さんの手を取り、私の手で包み込む。
変ないたずらで手を冷たくさせなくてもいいのに。

「あたためてくれるの?」

「一応、そのつもりです」

「ふはっ、俺の彼女は可愛いことしてくれるね」

楽しそうに笑う。
付き合いだして、こんな風に笑う政宗さんの顔も見慣れてきた。
< 161 / 219 >

この作品をシェア

pagetop