君に捧げる一途な愛
「どうして分かるの?」

「あのイタリアンバルは由香の好きな店じゃん。どうせ、由香にどこがいいか聞いたんだろ」

西田くんは全部お見通しとばかりに言う。

「その通りです」

「やっぱりな。人の意見を参考にするのはいいけど、自分の意思もちゃんと言えよ。今回は志乃の希望って話なのに、由香のお気に入りの店だし」

「うん。でも、イタリアンバルは私も好きな店だから」

「それならいいけど。なんか、志乃って言いたいことも溜め込んで自分で自分の首を絞めてそう。なんでも言う博美と正反対」

ズバッと言い当てられ気まずくなる。
確かに前まではそうだった。
だけど、今は少しずつだけど自分の気持ちを言うようにはなってきていると思う。

「西田くん、本当に同い年?年上の人と話してるみたい」

「おい、それっておっさん臭いってことかよ」

頼りがいがあるという意味で言ったつもりだったけど、上手く伝わってなかったのか西田くんは口を尖らせる。

「違うよ。頼りになるお兄さんみたいな感じってこと。西田くんがお兄ちゃんだったらよかったな」

「それって喜んでいいのか複雑だけど、同期のよしみとして可愛い妹を甘やかしてやるよ。ってことで、水取ってきてよ」

「えっ、甘やかしてくれるんじゃなかったの?」

不機嫌な顔をして言えば、西田くんは「冗談だよ」と言ってケラケラ笑うので、私もつられて口許が緩んだ。

「疲れてるかもしれないけど、もう少し食わないとバテるぞ。じゃあな」

食べ終わったトレイを持ち、西田くんは席を立った。
ホント、西田くんはよく見てるな。
同期の優しさに触れ、昼からも頑張れそうな気がした。
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