君に捧げる一途な愛
スルリと政宗さんの手から抜け出し、私がその上から握り返した。
私がこんなことをするとは思わなかったのか、政宗さんは驚いた表情になっていた。
ふふ、と満足して手を離したら政宗さんが顔を近づけてきた。

「今日、仕事が終わったら連絡する」

内緒話をするように耳元で囁く。

「……っ、」

うわー、これは反則です!
真っ赤な顔をしている私とは反対にしれっと経理部課長の顔をして、口許に笑みだけ浮かべている。
私はこの場から早く離れるべく、ペコリと会釈して踵を返した。

結局、私がやり返したと思ってもその上をいくことをしてくるのでドキドキしてしまう。
これが経験値の差なんだろう。
足早にエレベーターに乗って一階まで降りた。

本社を出ようとしたら、ポツポツと雨が振り地面を濡らしていた。
朝、どんよりとした雲が空を覆っていたので雨が降るのは時間の問題だなと思っていた。
よし、と気合いを入れ小走りで倉庫に戻った。


今日は、仕事終わりにバスケを見に行く約束をしている。
政宗さんが仲間内でバスケをしているという話を聞いてから見に行きたいと思っていた。
第二と第四の水曜の十九時から体育館を借りているらしい。
政宗さんは久々に参加するみたいで、見に来るかと誘ってくれた。

行きたいけど、部外者が行ってもいいのかと不安になった。
それを素直に伝えれば、参加者の家族や恋人など見に来ているから大丈夫だと言われたので、せっかくなので見に行かせてもらうことにした。

今日はそれを楽しみに、仕事に励むことができた。
 
< 167 / 219 >

この作品をシェア

pagetop