君に捧げる一途な愛
 
「オガは太っていたことで、数人の陰険なグループの男女から悪口を言われたりからかわれていたの。でもね、痩せた途端に手のひら返しじゃないけど女子のすり寄りは露骨だったわ」

悪口……。
その時の政宗さんの心情を考えたら胸が苦しくなった。

「本人的には、ただ痩せただけで顔や性格は変わったわけではないのに、女子の対応が違ったことに嫌悪感を抱いていたって。オガは見た目や体型しか見ていない人たちに嫌気がさしていたって幸也が言ってた」

そんなことがあったんだ。
でも、どうして伊織さんは私に昔の話をしてくれるんだろう。
意図がつかめず、黙って話を聞いていた。

「年齢を重ねてくると、容姿だけじゃなく背後にある家柄とかも関わってきて邪な気持ちで声をかけてくる人も多かったみたい。オガはそれにも失望していたから幸也も私も心配していたの。このまま誰とも付き合うことなく人生を終えるんじゃないかってね」

伊織さんはフフ、と笑う。
背後にある家柄ってなんだろう?という疑問が浮かんだ。

「それが、彼女ができたって幸也から聞かされて本当に驚いたの。話を聞けば自分から告白したって言うじゃない。まあ、告白するまで時間がかかってヘタレだったって幸也は言っていたけど。そんなオガの彼女が気になって見に来ちゃった。そしたら、こんな可愛い子だなんてビックリよ。ねぇ、志乃ちゃんから見てオガはどう?」

どう、と聞かれ考える。
< 172 / 219 >

この作品をシェア

pagetop