君に捧げる一途な愛


シャッフルランチの時、実際に自分の目で志乃を見たけど、真面目でいい子だなと思っただけで他の感情はなかった。
……はずなのに、気が付くと志乃のことを目で追っていた。
そんな彼女が可愛らしいハプニングを起こした。

志乃が食べようとしていた白玉がスプーンから転がり落ちた。
眉を八の字にして、俺の目の前に転がった白玉をどうしたらいいのかと悩んでいるように見えた。

俺がその白玉を紙ナプキンで包み、自分の白玉あんみつを差し出すとキョトンとした顔になっていた。
『ありがとうございます』と小さな声で言って恥ずかしそうに白玉を口に頬張る姿は、小動物みたいで本当に可愛らしかった。

なにより、知り合いの女性社員と話をしていて志乃がふわりと花が咲くような笑顔を見た瞬間、心が動いた。
純粋にこの子と付き合えたらいいなと思った。

その後、いろんな偶然が重なって志乃と付き合うことができて素直に嬉しかった。

今までの生活がガラリと変わった。
つならなかった日常に志乃という彩りが添えられた。

週末のデートや仕事終わりに志乃のマンションに行って晩御飯を食べる。
志乃の手料理は本当に美味い。
俺の好き嫌いを聞いてきて、極力苦手な食べ物は避けてくれている。
今ではすっかり胃袋を掴まれていた。

そんな満たされた日々を過ごしていたら、また母親から連絡が来るようになった。
日曜の夜、相変わらず母親がしつこく電話してくるので仕方なく実家に寄った。
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