君に捧げる一途な愛
比嘉部長が対応し「開いているから入って」とモニター越しに言う。
カチャと玄関のドアが開き、一人の男性の姿が見えた。
えっ、助っ人って男性?
私はリビングの入り口付近にいたけど場所を少し移動した。
「遅れてすみません」
どこかで聞いたことのある、耳障りのいいバリトンボイスの持ち主に意識が集中する。
いったい誰なんだろうと、ドキドキしながら廊下を歩いてくる男性を見る。
でも、不躾な視線にならないように注意する。
黒の薄手のニットにデニム、足元はくるぶしのソックス。
特にセットもされていない艶やかな黒髪に切れ長の目。
あれ?この顔はどこかで見たような気がするんだけど……。
鼓動が早くなる。
「政宗、今日は休みなのにすまないな」
「いえ、特に何もすることがなかったので構いませんよ」
比嘉部長の知り合いでまさむね?
「小笠原さん、今日はよろしくお願いします」
智美さんはそう言って軽く頭を下げる。
お、おがさわら?
ちょっと待って、バリトンボイスの主のフルネームは小笠原政宗ということになる。
「え、小笠原課長……?」
顔と名前が一致し、まさかそんなことがあっていいのかと動揺して何度も瞬きする。
「こんにちは、木下さん。今日はよろしく」
さほど驚くこともなく私の名前を呼んだ。
見た目が仕事の時と違うけど、本当に小笠原課長だ。