君に捧げる一途な愛

「あー、やっと帰ってきた」

「あのさ、何度も連絡してこないでよ」

「私からのメッセージも着信も無視ばかりするからでしょ」

母さんが頬を膨らませる。
割と実家には帰っている方だと思うけど、着信無視をするのがどうやらお気に召さないみたいだ。

リビングのソファに座ってお小言を聞いていたら、ドアの前に人影ができていた。

「帰ってきていたのか」

俺たちのやり取りが聞こえたのか、書斎から出てきた親父がソファに座った。
白髪まじりのオールバック、ラフな服装で家では社長という雰囲気は一切まとっていない。
普通の親父だ。

「まあね」

「仕事は忙しいのか」

「ぼちぼち」

「そろそろ戻る時期が近づいてきているが、準備はしているんだろうな」

「ああ。上司には来月話そうと思っている」

「そうか、こちらは政宗を迎え入れる準備を始めている。約十年世話になったんだ。お前も立花に不義理をせずに話をしろよ」

「分かってるよ」

「政宗はようやくか……。政孝は入社したばかりだから、まだまだ先だな」

親父が弟の名前を呟く。

俺には弟の政孝、妹の杏樹がいる。
杏樹とは一回り年齢が離れている。

親父は俺と政孝と一緒に働くことを目標に仕事を頑張っていると母さんから聞いたことがあった。
政孝は今年、機械メーカーに就職したばかりでこれからそこで経験を積むことになっている。
『オガサワラ』で俺と一緒に働くのはまだ先になる。
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