君に捧げる一途な愛
「早くない。まさかとは思うが、いい加減な付き合いをしているんじゃないのか?」
「そんなわけないだろ」
結婚したいと思うのは志乃しかいない。
イラッとして強い口調になった俺を見て、親父はニヤリと口角を上げた。
「だったら、連れてくることは可能だろう。一度政宗の彼女に会わせて欲しい。できれば今年中に」
「今年中?」
「これは決定事項だ。次に来るときには連れてきなさい。楽しみにしている」
そう言って親父は再び書斎に戻っていった。
親父のやつ言い逃げじゃないか。
マジかよ、と頭を抱えたくなった。
そんな俺を見て母さんが口を開く。
「相手がいるなら会ってみたいと思うのは親心だから仕方がないわよ。私だってどんなお嬢さんなのか気になるし。それにね、パパは早く政宗に結婚して欲しいって言ってたわ。孫の顔が見たいんだって」
孫って気が早すぎるだろ。
「まあ、結婚はあなたたちのペースでもいいけど、彼女の存在は今後の政宗にとっても大事なことなのよ」
「それって……」
「来年、あなたの副社長就任披露をしなきゃいけないのは知っているでしょ。その時に、政宗に特定の相手がいないと周囲に知られたらどうなるかなんて、少し考えれば分かるでしょ?」
母さんに言われ、その先が予想できた。
どうせ、いろんなところから縁談話や面倒ごとが舞い込んでくるのは目に見えていた。
なるほど、そういうことか。