君に捧げる一途な愛
いや、今は他人より自分のことをどうにかするのが先だなんて思っていたら、母さんの声に思考が途切れた。
「政宗、暇なら杏樹を駅まで迎えに行ってくれない?」
「暇じゃないんだけど」
「杏樹がお兄ちゃんがいるなら迎えに来て欲しいって言ってるからお願いね」
強引に押し付けられ、仕方なく車で駅に迎えにいくことになった。
***
日曜にそんなことがあっての今日だ。
志乃は『ラブイット』の社員の小笠原政宗という男の告白を受け入れてくれた。
志乃は俺が『オガサワラ』の後継者であることを知らない。
だから、そのことを志乃が知ったらどういう反応をするのか気がかりだった。
本当の俺を知ったとき、志乃が受け入れてくれるだろうかという不安が付きまとっていた。
幼少期からのトラウマで、周りからの反応に敏感になっていたせいでもある。
御曹司ではない俺に好意を寄せてくれた志乃。
今までの逆パターンだったので、どう打ち明けようかと考えていた矢先にこんなことが起こってしまった。
俺からならまだしも、他人から自分が知らなかった彼氏の事情を聞かされたんだ。
傷つかない訳がない。
その時の志乃の心情を考えただけで胸が苦しくなった。
これは俺の失態だ。
早く志乃と話をしなければいけないと気が焦る。
「本当にごめんなさい」
「いや、佐々木のせいじゃない。俺が早く話しておけばよかったんだ」
何度も謝る佐々木を宥める様に言う。