君に捧げる一途な愛

こいつは面倒見がよく、周りのことにもよく気を配れる奴だった。
バスケのポジションもポイントガードで、チームの司令塔として活躍していたとミニバスのコーチが言っていた。
常に冷静で周りの状況を判断して的確に指示を出していたらしい。
それは社会人になっても生かされている。

同期の間でも幹事を率先してやったり、盛り上げに徹しているという話を聞いていた。
志乃の彼氏としては複雑だが、こんな風に言ってくれる同期に恵まれているのはいいことだと思う。

「西田に言われなくても分かっている」

「だったらいいです。お時間を取らせてすみません」

西田は軽く頭を下げた。
俺は西田の肩をポンと叩き、体育館を出た。

さっきまで激しく雨が降っていたが、今は小雨になっていた。

走って駐車場に行き、車のドアを開けて乗り込んだ。
スマホを取り出し、志乃に電話をかけるけど繋がらず、留守番電話になった。

もう家に帰っているんだろうか。
体育館には俺の車で来たので、志乃がどうやってここから帰ったのか気がかりだった。
雨に濡れていないだろうか。
泣いていないだろうか。

そんなことを考えただけで胸が軋んだ。
もっと早く話しておけばよかったと後悔だけが募る。

電話を助手席へ置くと、車のエンジンをかけて志乃のマンションへと向かった。
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