君に捧げる一途な愛

予想外の展開にドキドキが止まらない。
それより、私がいることに驚く様子がなかった小笠原課長に違和感を覚えた。
もしかして私が一緒だということを知っていたんだろうか。
私は助けを求めるように智美さんに視線を向けた。

「志乃ちゃんも知っていると思うけど、経理部の小笠原課長。大ちゃんが『政宗なら車も持っているし、俺が一番信頼しているやつだから安心して啓介と志乃ちゃんを任せられる』って言うから、お願いしちゃった。志乃ちゃん、小笠原課長と何度が話をしているみたいだし、ちょうどいいかなと思って」

ふふ、と笑う智美さん。
確かに話はしたことはあるけど、そういうことは前もって言ってほしかった。
完全に事後報告で、心の準備ができていない。

「しのちゃん、いこ」

奥の部屋からこちらに向かって啓介くんが笑顔で歩いてきた。
その頭にはクマの顔が付いたキャップをかぶり、小さなリュックも背負っている。
その姿もめちゃくちゃ可愛い。

啓介くんの視線が小笠原課長を捉えた。

「まーくんだ!」

「啓介、大きくなったな」

「うん」

その場でしゃがみ、帽子の上から啓介くんの頭を撫でながら柔らかな笑顔で話す小笠原課長に思わず目を見開いた。
こんな表情もするんだ。
見たことのない笑顔にドギマギしてしまう。

小笠原課長がまーくん……。
その可愛らしい呼ばれ方に思わず顔がにやけた。
< 19 / 219 >

この作品をシェア

pagetop