君に捧げる一途な愛

「志乃、ごめん。佐々木から話を聞いた」

その言葉に心臓がドクリと嫌な音を立てた。

「たくさん泣かせたよな」

政宗さんは少し身体を離して私の顔を見ると、申し訳なさそうに眉を下げる。
今の私の顔は軽くスキンケアしただけでノーメイクだし、泣いて目も赤いし不細工すぎる。

「志乃に話さないといけないことがあったんだ。聞いてくれるか?」

不安げに聞いてくる。
政宗さんはわざわざ話しに来てくれたんだ。
断る理由はない。
私は静かに頷いた。

政宗さんにリビングのソファに座ってもらい、私はホットレモンの用意を始めた。
レモンを切りながら考えていた。

御曹司とか、会社を辞めるとかどういうことなんだろう。
それを話してくれるのかな。
出来上がったホットレモンの入ったマグカップをテーブルに二つ置いて、政宗さんの隣に座った。

「どうぞ」

「ありがとう」

政宗さんはホットレモンを一口飲んで口を開いた。

「どこから話すべきか……。志乃は佐々木からなんと聞いている?」

私の顔を覗き込み、優しく問いかけてくれる。

「政宗さんが御曹司で来年に会社を辞めて親の会社に戻るって……」

「そうか。まず、御曹司のことだけど俺は『オガサワラ』の社長の息子なんだ」

「えっ」

『オガサワラ』といえば、大手企業で就活生に人気が高い。
友達の彼氏がそこを受けて、残念ながら落ちたという話を聞いたことがある。
それに、前に博美が『オガサワラ』の商社マンと合コンしたことがあると言っていた。
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