君に捧げる一途な愛

そんな会社の社長の息子が政宗さんなの?
規模が大きすぎて言葉が出ない。

「会社を辞める件だが、それは本当だ。他社で数年経験を積んでから親の会社に戻ることは家の方針だった。だから、俺は『ラブイット』に就職したんだ。来年三月で会社を辞めることになっている」

「三月……」

「ごめん。黙っているつもりはなくて、いつか話さないといけないと思っていたんだがタイミングがつかめなくて」

申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にする。
私に話そうとしてくれていたんだ。
政宗さんから事情を聞けたのはよかったけど心の整理ができない。
なにか言わないとと思うけど、言葉がでない。

「本当にごめん。いきなりこんな話をしても困るよな。目が赤くなるまで泣かせてしまって」

何度も謝り、私の目尻をそっと撫でる。

ふと、政宗さんが会社を辞めた後はどうするんだろうという疑問がわいた。
政宗さんは大企業の御曹司だ。
私みたいな平凡な一般人が付き合えるような人じゃない。
別れたりするのかな……。
どんどんマイナス思考に陥り、さっきまで止まっていた涙がこみ上げてくる。

「志乃?」

鼻をすすった私に気づいた政宗さんが目を見開いた。

「どうして泣いているんだ?」

「あの、私たち、別れ……た方がいい……ですか?」

好きだけじゃどうにもならない問題もある。
私なんて一般家庭で育った平凡な女で、『オガサワラ』の後継者の政宗さんには不釣り合いだ。
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