君に捧げる一途な愛
***

「小笠原課長の実家に行くって、すごい急展開だね」
 
恒例の由香との社員食堂でのランチ。
今日も隣に座ってコソコソ話だ。

「そうなの。今から緊張しておかしくなりそうだよ」

「そんな大げさな」

「大げさじゃないよ。由香だって九条さんの実家に行くことになったら緊張するでしょ」

「……確かにするわ」

少し考えこんで返事をした由香がコーヒーを飲む。
政宗さんから両親に会ってもらいたいと言われて、あっという間に一週間経った。
いよいよ来週に迫った政宗さんの実家訪問。

「まさかの御曹司だし、前にお兄ちゃんが家柄がどうとかって言っていたのはそういうことだったのね」

そういえば、幸也くんが政宗さんのことをすべてにおいて優良物件とか、誠実で性格も家柄も人柄もいいと言っていたと由香が教えてくれたことを思い出す。

「服装とか手土産とか考えているの?」

「うん、一応ね。ご両親は和菓子が好きだって聞いたから、それを買っていこうかなと思ってる。服装は悩み中」

「そこ一番悩むよね。下手に変な服装で行って相手のお母さんにハマらなかったら最悪だし」

「めちゃくちゃネットとかで調べている」

「結局は清楚系で行くのが無難よね。まあ、その辺はいろいろ相談に乗れるからなんでも言って」

「ありがとう」

由香は職業柄、そういった服装には詳しいのですごく頼りになる。

「じゃ、そろそろ戻ろうか」

その言葉に立ち上がる。
由香がトレーを片付けるのを待ち、社員食堂を出てエレベーターに乗った。
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