君に捧げる一途な愛
「それじゃあ、お預かりします」
「これ、食べ物とかおもちゃが入っているから適当に遊んでやって。何かあったらすぐに連絡してくれていいから」
「分かりました」
小笠原課長が比嘉部長からトートバッグを受け取った。
本当に今から小笠原課長と一緒に過ごすの?
さっきの笑顔といい、ラフな服装や髪型、普段と全然違うので緊張が半端ない。
仕事の会話すら、ろくにしたことがないのに大丈夫なんだろうか。
もう、啓介くん頼みしかない。
「パパ、ママ、いってきまーす」
「行ってらっしゃい。まーくんと志乃ちゃんの言うことをちゃんと聞くのよ」
「はーい。しのちゃん、おててつなご」
ニコニコしながら手を差し出してくる啓介くんが可愛すぎて悶えてしまう。
母性本能をこれでもかってぐらいくすぐられる。
「今日はゆっくり過ごしてくださいね」
「ありがとう。お願いね」
私は啓介くんと手をつなぎ、エレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの操作盤の前に立ち、ボタンを押している小笠原課長を見る。
比嘉部長の言葉から絶対的な信頼があるんだろう。
それにしても、会社とは全然違う見慣れない姿にソワソワしてしまう。
私の無言の視線に気づいたのか、小笠原課長と目が合った。
ドキッと心臓が跳ね、とっさに目線を啓介くんの方へ落とした。
ちょうど私を見上げた啓介くんが「たのしみだね」と笑いかけてくれたお陰で、少し気持ちが落ち着いた。