君に捧げる一途な愛
「志乃、待っていたよ」
「どうして……」
「話があるって言っただろ」
「私はないって言いました。手を離してもらえませんか?」
先輩に強く握られている手首が痛い。
こんなに強引な人だったかな。
「話を聞いてくれるなら離してもいい」
そんなことを言われてしまい、私は頷くしかなかった。
歩行者の邪魔にならない場所まで移動し、やっと解放された手首を見ると少し赤くなっていた。
私は手首を擦りながら先輩を見る。
パッと見は爽やかなサラリーマンなんだけど……。
「志乃、あの時は本当にごめん」
いきなり頭を下げられて面食らった。
もう終わったことなのに、どうしてこんなことをするんだろうという疑問が湧く。
「ちゃんと志乃に謝れていなかったなと思ったんだ」
「今さら謝られても困ります。先輩は私を振り、別れました。そこで私たちの関係は完全に終わってます」
「違うんだ。俺は別れるつもりはなかったのに、志乃の妹に騙されたんだよ。あいつが志乃より自分の方が好きだとか言って誘惑してきたんだ」
本田先輩は私の妹の茅乃を非難した。
茅乃は先輩に声をかけた時に、私と不仲だというのを言ったんだろうか。
そうじゃないと、私の前で茅乃の悪口なんて言わないよね。
先輩は自分は悪くないと主張する。
もし、私が茅乃と和解していなかったら、先輩の話を少しは信じたかもしれない。