君に捧げる一途な愛

「ごめんなさい。無理です。それと、茅乃を悪く言わないでください。失礼します」

早口で一気に言い終えて離れようとしたら、「ちょっと待てよ」と言って先輩の手が伸びてくるのが見えた。

二度と先輩に掴まれたくなかったので、後ろに後ずさったら人にドンとぶつかった。
謝罪しようとしたら、そのまま私の身体は誰かの腕に抱きしめられた。

え、と思ったけど背後から香る石鹸の匂いとこの腕は私がよく知っている人のものだった。

顔だけ振り返ると、心配そうな表情の政宗さんと目が合った。

「大丈夫か?」

「はい」

政宗さんは私を庇うように前に出た。
私を守ってくれている背中に安心感を覚え、政宗さんの着ていたコートにギュッとしがみついた。

先輩は急に現れた政宗さんに鋭い視線を向けた。
 
「なんだよ、お前は」

「俺は志乃の婚約者だけど」

「婚約者?」

先輩が眉根を寄せる。
婚約者という言葉に不謹慎にもドキドキしてしまう。
そんな場合じゃないのに。

「そうだけど。それで、お宅はどちら様?」

「お、俺は志乃の大学時代の知り合いで……」

「大学時代?」

政宗さんが低い声で呟く。
もしかしたら、先輩が私の元カレだと気が付いたのかもしれない。
政宗さんは私を抱き寄せた。
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