君に捧げる一途な愛
「その大学時代の知り合いが志乃になんの用?久しぶりに会って思い出話でもしてたのか?」

「いや……」

「じゃあなんだよ。まさかとは思うが、やり直したいとか考えていたんじゃないだろうな」

鋭い指摘に先輩は口をつぐんだ。
政宗さんは追求を緩めることなく、言葉を続ける。

「黙っているっていうことは図星か。お前、自分が志乃に対してやったことを忘れたわけじゃないだろうな。今さら、どの面下げて声をかけてきているんだ。お前は最低なことをして志乃を深く傷つけたんだ。復縁を迫るとか、そんな都合のいいことがまかり通ると思うなよ」

政宗さんの怒りをはらんだ声に、先輩は言葉を発することなく唇を噛みしめる。

「お前と志乃の関係はもう終わっているんだ。この先、志乃を見かけることがあっても二度と声をかけないでくれ」

政宗さんは私の肩を抱いたまま歩き出す。
背後から「ごめん、志乃」と声が聞こえたけど私は振り返らなかった。

「大丈夫か?」

政宗さんが気遣うように聞いてきて、私は頷いた。

「助けてくれてありがとうございました」

「今回は間に合った?」

「はい」

私はクスリと笑いながら言う。
前に居酒屋で朝倉さんに絡まれたことがあったけど、その時に助けに行けれなかったことを政宗さんは気にしていた。
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