君に捧げる一途な愛
「ありがとう」
政宗さんのお父さんは顔を綻ばせた。
その表情は『オガサワラ』の社長ではなく、息子を思う父親のそれだった。
「やっぱり志乃ちゃんは素敵なお嬢さんだわ。ずっと志乃ちゃんか由香ちゃんにお嫁に来てもらえたらって思っていたのよ。二人とも年上の彼氏がいるって話を聞いていたから残念だなと思っていたところに、政宗が志乃ちゃんを連れてきてくれるなんて!こんな奇跡があっていいのかしら。夢が叶ったわ」
百合さんは嬉しそうに言う。
そういえば、前にそんな風なことを言っていた気がする。
「紹介も済んだから俺らは帰るよ」
いきなり政宗さんは立ち上がった。
え、もういいんだろうか。
戸惑っている私の手を政宗さんが掴んだ。
「えー、早すぎるでしょ。私、まだ志乃ちゃんとお喋りしたいのに」
「そうだぞ。私も志乃さんともっと話がしたい」
「いい加減にしてくれよ。志乃だって緊張して疲れてるんだから。今日はこれで終わりにしてやって。このあとも予定が入ってるし」
百合さんも政宗さんのお父さんも私と話がしたいと言ってくれるのは素直に嬉しかった。
でも、いつも以上に緊張して疲れていたのを政宗さんは感じ取ってくれたのかもしれない。
「確かに彼氏の親と会うなんて緊張するわよね。私も自分のことを思い出したわ。そうだ、志乃ちゃん!連絡先を交換してもらってもいい?」
百合さんはそう言ってスマホを取り出してきた。