君に捧げる一途な愛

「母さん!」

「いいじゃない。近いうちに志乃ちゃんは娘になるんだから」

「私もいいだろうか」

そう言って、政宗さんのお父さんもテーブルの上に置いてあったスマホを差し出してきた。
ふふ、と思わず笑ってしまった。

「はい。ぜひ、お願いします」

「お、親父?」

政宗さんが珍しいものを見るような目で自分の父親を見ていた。
私はバッグからスマホを出して百合さんと政宗さんのお父さんと連絡先を交換した。
追加した二人の連絡先。
小笠原政直、小笠原百合。

「政宗さんの男性の家族の人はみなさん"政"という字が付くんですね」

「ああ、そうだな。じいさんのこだわりらしい」

なるほど、家によってこだわりとかあるよね。
うちも妹と同じ字が名前に入っているし。

「志乃さん、私のことも名前で呼んでもらってもいいだろうか」

政宗さんのお父さんの突然の申し出に驚いて目を見張った。

「百合も名前だし、私も名前で呼んでもらいたいんだが」

「は?親父はなに言っているんだ。志乃、呼ばなくていいから」

政宗さんが呆れたように言うと、お父さんは不服そうな表情になる。

「呼んでもらったっていいだろ。私だけ名前で呼ばれないのはずるいと思うんだが」

「馬鹿だろ。いい年したおっさんがそんな我儘言うんじゃないって」
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