君に捧げる一途な愛

「構いませんよ。政直さん……でいいですか?」

私がそう呼べば政宗さんのお父さん、もとい政直さんが嬉しそうに笑った。
それがすごくかわいく思えて、ほっこりした気持ちになった。



「今日はありがとうございました」

「こちらこそ無理言って来てもらってすまなかったね。でも、志乃さんと話ができてよかったよ」

百合さんはもちろんだけど、政直さんもすんなりと私を受け入れてくれた。
政宗さんの実家に来る前は、どんなご両親なんだろうとあれこれ考えていた。
大手企業の社長と社長夫人のイメージがいい意味で裏切られた。
二人とも気さくで優しい人だった。

政宗さんのお母さんが百合さんだとは思わなかったけど。

「今度はみんなでご飯を食べましょうね。腕によりをかけてご馳走を作るから」

「その時は是非お手伝いさせてください」

「あら、それは嬉しいわ。娘の杏樹なんて全然手伝ってくれないのよ。志乃ちゃんは手際がいいから今から楽しみ」

百合さんの手料理が食べれるなんて最高だ。

「それでは失礼します」

政宗さんのご両親にお礼を言って、家を出た。

別れる間際、百合さんは『政宗は来なくてもいいから、志乃ちゃんだけまた遊びに来てね』と言っていた。
それを聞いた政宗さんは複雑な顔をしていたけど。
< 213 / 219 >

この作品をシェア

pagetop