君に捧げる一途な愛

「素敵なご両親ですね」

「そうか?普通のおじさんおばさんだっただろ」

車を走らせている政宗さんに話しかけるとそんな返事が返ってきた。

「百合さんがあんなにお喋りな人だとは思わなかったです。料理教室ではもう少しおっとりしていたので」

「あれは外用の顔だよ。家ではうるさいだけだから」

うんざりしたように言う。
でも、百合さんとなら仲良くやれそうだ。

「志乃、今日は本当にありがとう」

「いえ。私も政宗さんのご両親に会えてよかったです」

「そう言ってもらえてよかったよ。次は志乃のご両親に挨拶にいかないといけないな」

政宗さんの言葉に私はハッとした。

「そ、うですね。また親に話をしてみます」

「娘さんを下さいとか言ったら、まだ早いとか言って追い返されたりしないかな」

そんなことを言う政宗さんが意外すぎて笑ってしまった。

「大丈夫ですよ。うちの父は優しい人なので」

お父さんはどんなときでも私の味方でいてくれた。
驚くだろうけど、きっと喜んでくれるはずだ。
お母さんは妹が絡んでいなかったら、どこにでもいるような母親だと思う。
どちらかと言えば、私から距離を置いていた。

前にお父さんから連絡があったとき、『母さんが志乃は元気にやっているのか?』と心配していたと言っていた。
お母さんが私のことを気にかけてくれていたことを知れて嬉しかった。

一度、顔を見せに帰ろうかなとぼんやり考えていたら、いつの間にか『シャルアント』の駐車場についていた。
どうやら、晩御飯を食べるために予約を取ってくれていたみたいだ。
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