君に捧げる一途な愛

「梨音ちゃん、迎えに来たよ」

「わざわざありがとうございます」

バーの中に入ってきた立花課長は朔斗さんとなにか話している。
もしかしてーーー

「梨音ちゃんの彼氏って……」

「うん、立花課長なの」

恥ずかしそうに言う。
えー、と大声を出すのを我慢した私はエライと思う。

「こんばんは、木下さん。マサくんももうすぐ来ると思うよ」

「へ?」

政宗さんのことだよね。
二人は連絡を取りあったんだろうか。

「木下さんの迎えもすぐに来るから、梨音ちゃん帰ろうか」

「はい。あ、朔ちゃんお会計……」

「ああ、それならもらってるから」

「えっ、もしかして翔真さん?」

それに答えることなく、立花課長はフッと笑って梨音ちゃんの着ていたコートを手に持つ。

「さあ、帰ろう」

そう言ってコートを肩に掛けている。
うわー、やることがスマートすぎる。

「ありがとうございます。じゃあ、志乃ちゃんまた」

「うん、またね」

私は梨音ちゃんに手を振った。
二人を見送り、私は残っていたシャンディーガフを飲み干した。

それにしても、美男美女ですごくお似合いだった、なんて思っていたらドアベルが鳴った。
視線を向ける前に、政宗さんが私を呼んだ。

「志乃、お待たせ。帰ろうか」

私のそばに来た政宗さんは、家に帰っていたのか私服に着替えていた。

「はい、わざわざ来てくれてありがとうございます」

私はバッグを持って立ち上がった。
今日は飲みすぎていないので、足元はフラフラしていなかった。
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