君に捧げる一途な愛
「あの、お会計は」
「君の分ももらってるから大丈夫だよ」
「もしかして立花課長ですか?」
朔斗さんはニコリと微笑んだ。
立花課長は私の分まで支払いしてくれていたんだ。
「どうしよう」
梨音ちゃんに伝言を頼もうかな。
つい口に出ていた私の独り言を耳にした政宗さんが心配そうに聞いてきた。
「なにかあったのか?」
「立花課長が私の分まで食事代を払ってくれていたみたいなのに、お礼もなにも言えてなくて」
「あー、なるほどね。今日はおとなしく奢られときな。お礼なら次に会ったときに言えばいいよ。俺が翔真に志乃のことを伝えておくから」
「ありがとうございます」
私はその言葉に安心し、朔斗さんに「ごちそうさまでした」と言ってバーを出た。
政宗さんの車を止めていた近くのコインパーキングに着いた。
車に乗る直前、政宗さんが口を開いた。
「さて、このあとは家に送ろうか」
えっ、とガッカリしてしまった。
今日は金曜だしお泊まりすると勘違いしていた自分が恥ずかしくなり俯いた。
「そんな可愛い顔しないで」
耳元で囁かれ、一気に体温が上がる。
ゆっくりと顔をあげると、口許に笑みを浮かべた政宗さんと目が合う。
「志乃に選ばせてあげる。いち、自分の家に帰る。に、俺の部屋に行く。どっちがいい?」
どっちがいい、なんて分かってるくせに政宗さんは意地悪だ。
「……政宗さんの家で」
小さな声で言えば、政宗さんは「仰せのままに」と言って私の頭にキスを落とした。
end.