君に捧げる一途な愛
「しのちゃん、たのしいね。もういっかいすべろ」
満面の笑みで言う啓介くんに私は苦笑いしかできない。
さっきから何度も滑ったのでお尻が痛くてそれどころではない。
本音はもう勘弁してもらいたいけど、子供相手に上手く断ることができない。
また滑らないといけないのかと思うとため息が出る。
そんな私の心情を察知してくれたのか、小笠原課長が助け舟を出してくれた。
「啓介、滑り台は休憩して、そろそろ弁当を食べようか」
「えー」
「ママが作ってくれた弁当、俺が食べるぞ」
「それはだめ」
「じゃあ、弁当食べるか?」
「うん」
啓介くんの返事に私は胸を撫でおろす。
こうして、無限ループ滑り台は小笠原課長のお陰で終わりを告げた。
小笠原課長が芝生の上にレジャーシートを敷いてくれている間に、私と啓介くんは手を洗いに行く。
私たちが戻ってくると、交代するように小笠原課長が手洗い場に向かった。
レジャーシートの上には小さな弁当箱と水筒が置かれていた。
これはもしかして啓介くんのお弁当?
あれ?と頭の中に疑問符が浮かぶ。
「比嘉部長から渡されたトートバッグの中に啓介の弁当が入っていたんだ」
不思議に思っていたら、手を洗って戻ってきた小笠原課長が言う。
「そうなんですね」
おかしいな、私も啓介くんのお弁当を作ってるんだけど……。