君に捧げる一途な愛
普通に考えて小笠原課長はモテそうだから、そういう経験は何度もあると思っていた。
「あぁ、なかなかそういう機会には恵まれなかったから」
小笠原課長は真面目な表情で答える。
「何かすみません。私が作ったこんなお子様みたいなお弁当で」
前に料理教室に通っていたことがあったけど、料理に絶対的な自信があるわけではない。
小笠原課長の初めての手作り弁当が私で申し訳なくなる。
「どうして謝るんだ?すごく美味しいよ。この卵焼きも俺好みだし。ほうれん草が中に入っていて彩りも綺麗だよ」
「ありがとうございます」
面と向かって褒められて気恥ずかしくなる。
お世辞かも知れないけど、そんな風に言ってもらえて素直に嬉しかった。
いつもは、前日の残りのおかずとか適当に詰めたり、冷凍食品を利用している。
今日はちゃんと作っておいてよかった。
小笠原課長は再び、弁当を食べ進める。
私は「お茶を買ってきます」と声をかけて自動販売機に向かった。
私が戻ってきたら、啓介くんはお弁当を食べ終えていて、おやつの棒付きのアメを舐めていた。
小笠原課長も食べ終わると、さっき渡したお茶をゴクリと飲んだ。
のんびりとした時間が流れている。
たまにはこんな休日もいいものだな。
まったりしていたら、座っていた私の足にピョンと緑色の物体が飛んできた。
「うわっ」
驚いて、それを逃がそうと反射的に足を上げると身体が横に倒れた。