君に捧げる一途な愛
「大丈夫か?」
倒れそうになった私の身体を手で支えてくれたのは小笠原課長だ。
バッタに驚いてひっくり返りそうになったとか恥ずかしすぎる。
慌てて身体を起こす。
「す、すみません」
「しのちゃん、どうしたの?」
啓介くんも心配そうに聞いてくる。
そりゃあ、いきなり大きな声で叫んだら気になるよね。
大人なのにバッタに驚いたとか情けなくなる。
「緑のバッタが足に飛んできたからビックリして」
「バッタ?」
今度は小笠原課長が口を開く。
「はい。バッタです。虫とか見るのはギリギリセーフですけど、触ったりするのは苦手で」
「それは災難だったな」
「しのちゃん、バッタきらいなの?」
啓介くんがクリクリした目を私に向けて聞いてくる。
苦手とか言葉の意味が分かるだろうか。
三歳の子に難しい言葉を話したとしても理解できないよね。
好きとか嫌いなら分かるということは、怖いとかなら大丈夫そうかな。
「嫌いというかピョンピョン跳ねるのが怖いんだよね」
「しのちゃん、おとななのにバッタがこわいの?ママはてでつかまえてくれるよ」
啓介くんはクスクス笑う。
この答えは正解だったみたいだ。
智美さん、バッタとか手で捕まえられるなんてすごい!
母は強しだなぁ。
「まーくん、ボールであそぼ」
トートバッグをゴソゴソとあさり、手のひらサイズのボールを取り出した。