君に捧げる一途な愛
「よし、やろうか」
小笠原課長は立ち上がると啓介くんの後を追いかけ、二人はボールを転がして遊び始めた。
私はその姿を見ながら変な気持ちになる。
あの無口で堅物だとか言われている小笠原課長が笑顔で子供とボール遊びするなんて信じられない。
しかも、走ったりしているなんてレアすぎる。
博美が見たら発狂するんじゃないかな。
服装だってスニーカーにデニムだよ。
普段、スーツしか見たことがなかったので私服姿にドキドキしてしまう。
数時間一緒に過ごしてみて、改めて素敵な人だなと思った。
常に啓介くんのことを気にかけていて、将来はいいお父さんになりそうだ。
さっきも私が作ったお弁当を残さず食べ、『ごちそうさま、弁当ありがとう』と言ってくれた。
『弁当のお礼に今度、なにか御馳走する』と言われたけど、遠慮しておいた。
そこまでしてもらうことはないと思ったからだ。
博美は小笠原課長に彼女はいないと断言していたけど、絶対にいるよね。
そんなことを考えると、胸がチクリと痛んだ。
「しのちゃーん、しゃしんとって」
ボールを手に持ち、小笠原課長に抱っこされた啓介くんが嬉しそうに叫ぶ。
そういえば、小笠原課長も部長に写真を撮るように頼まれているって言っていた。
だから、さっきも滑り台を滑っている啓介くんの写真を撮っていた。
私はバッグからスマホを取り出し、カメラ機能を起動させた。