君に捧げる一途な愛
ピントを合わせていたら、こちらを向いている小笠原課長と画面越しに目が合った気がした。
写真を撮るんだから、こちらを見るのは当たり前だ。
変に意識してしまい、動揺から手が震える。
「い、いくよ。はいチーズ」
掛け声とともにタップした。
撮れた画像を見ると少しぶれていた。
「すみません、ちょっとブレてしまったので取り直してもいいですか」
「いいよ。ほら、啓介も志乃ちゃんの持っているスマホの画面を見て」
そう言って私の持っているスマホを指さす。
何気なく私の名前を言われ、ドキッとした。
どうして名前を?と思ったけど、啓介くんは私のことを志乃ちゃんと呼んでいる。
だから、分かりやすいように言ったのかもしれない。
一瞬の間にいろんなことを考えてしまった。
「しのちゃん、まだ?」
啓介くんに呼ばれハッとした。
私は慌ててスマホを構える。
「ごめん、今撮るね」
失敗しないように連写した。
これだけ撮れば一枚ぐらいはいい写真があるでしょ。
「撮れたよ」
「みせてみせて」
小笠原課長の腕から降り、小走りでこちらに向かって駆け寄ってくる。
私は撮れた写真を啓介くんに見せてあげた。
「わぁ、まーくんとなかよしだ」
「そうだな」
「しのちゃんもいっしょにとろう」
不意に啓介くんが笑顔で言った。