君に捧げる一途な愛
「しのちゃん、おててピカピカになったよ」
水道で洗った手を私に見せてくれる。
「ホントだ。これでアイスが食べられるね」
「うん」
嬉しそうに笑う啓介くんは本当に可愛い。
でも、どこでアイスを食べるんだろう?
レジャーシートは片付けたし……。
コンビニかどこかで買って食べるのかな。
そんなことを考えていたら、小笠原課長はとんでもないことを口にした。
「じゃあ、車に乗って俺の家に行こうか」
「えっ」
「わーい、まーくんのいえだ。はやくいこう」
啓介くんは小笠原課長と手をつなぎ、ウキウキとした足取りで歩き出す。
私はどうしたらいいんだろう。
もう、お役御免で帰ってもいいのかな。
いやいや、小笠原課長に全部押し付けるようなことは出来ない。
それに、智美さんに預かるって言ったのに帰れる訳がない。
小笠原課長はあれこれ考えていた私に決定事項をつきつけた。
「木下さんも一緒に行くよ」
「しのちゃん、いこう」
ニコニコ笑いながら啓介くんが空いている手を私に差し出してきた。
可愛い笑顔を向けてきている啓介くんの手を握らないという選択肢は私にはない気がする。
ふと小笠原課長を見ると、クスリと笑みを浮かべて口を開いた。
「志乃ちゃん、そういうことだから行こうか」
「っ!」
再び、名前を呼ばれて声にならない声を上げた。
自分の置かれている状況に戸惑いを隠せないでいた。