君に捧げる一途な愛
意味が分からず何のことだろうと考えていたら、私はあることを思い出して大きな声を出してしまった。
「あっ!」
「シャッフルランチの時、デザートの白玉あんみつの団子をテーブルに転がしたよね」
「お、覚えているんですか?」
「あれはなかなかのインパクトがあったから忘れないよ」
私はその時の光景がよみがえり、頭を抱えたくなった。
あれは入社一年目の時のシャッフルランチ。
梨音ちゃんと再会したあの日、まだ“課長”になる前の小笠原課長も経理部から参加していたんだ。
梨音ちゃんと会えたのは嬉しかったけど、新入社員の私が他の部署の人たちを前にガチガチに緊張していて失態を犯してしまった。
食後のデザートの白玉あんみつを食べようとしたら、スプーンから白玉だんごが落ちてコロコロと転がった。
それがあろうことか、私の前に座っていた小笠原課長の方へ転がってしまったんだ。
この場が友達同士とかだったら、誰かが笑って『何やってんの~』『その団子、生きてるんじゃないの?』なんて突っ込んでくれるはず。
だけど、ほぼ初対面の人たちだったので、みんな反応に困っていたと思う。
運悪く、梨音ちゃんとは席が離れていた。
団子、どうしよう。
転がった団子をじっと見つめていても仕方ない。
私が手を伸ばそうとしたとき、小笠原課長が目の前の団子を黙って拾ってくれた。
それを紙ナプキンに包んだあと、自分の白玉あんみつのお皿を私の前に置いた。
『甘いものが苦手だから食べてくれたら助かる』と言って。