君に捧げる一途な愛
「伝票に不備があった時に小笠原さんが物流部に来たことがあったでしょ。その時、志乃ちゃんが恋する乙女みたいな表情で小笠原さんの方を見ていたんだよね」
嘘でしょ……。
全く自覚がなかった。
恋する乙女って私は一体どんな表情を人前で晒していたんだろう。
穴があった入りたい!
「で、なにか進展はあった?」
「なんのですか?」
「なるほど、理解した」
智美さんはため息をつき「二人とも焦れったいわね」と小さな声で呟いた。
最後の方の言葉がよく聞こえなかった。
「智美、行くぞ」
車に乗り込んだ比嘉部長が智美さんを呼ぶ。
話はそこで中断し、智美さんは助手席へと足を進めた。
運転席の窓を開け、比嘉部長が顔を覗かせる。
「二人とも、今日は本当に世話になった。お陰で智美とのデートを楽しめたよ」
「それはよかったです」
「あとは若い二人で晩飯でも食べに行ったらどうだ?」
比嘉部長は小笠原課長に向かって言う。
二人でって、それはハードルが高いです!
「そうですね。木下さんがよければ行こうと思っています」
えっ、そうですね?
小笠原課長の肯定の返事に私は驚きを隠せない。
てっきり断ると思っていた。
「そうか。志乃ちゃん、何か美味いものでも食わせてもらいなよ」
「二人とも、今日はお世話になりました。それじゃあ、また会社で」
智美さんがにこやかに手を振ると、比嘉部長の車は走り出した。