君に捧げる一途な愛
「あらあら、今日は可愛い子と一緒なのね」
五十代ぐらいの優しそうなおばさんが私たちのテーブル席にお冷を持ってきた。
にこやかに笑いかけてくれ、私は軽く会釈する。
「また、メニューが決まったら声をかけてね」
そう言ってカウンターの奥に入っていった。
小笠原課長の行きつけの『能倉(のくら)』という定食屋。
小笠原課長が働きだしてから通うようになったと言っていた。
カウンター六席と四人掛けのテーブルが三つという比較的こぢんまりとしたお店で、夫婦で切り盛りしていた。
「木下さん、何にする?」
「おススメとかってありますか?」
「何を注文しても美味しいけど、メンチカツは絶品だな」
小笠原課長が絶品と評価するメンチカツを食べてみたくなった。
「じゃあ、メンチカツ定食にします」
「そうか。おばちゃん、メンチカツ定食ひとつと日替わり定食ひとつ」
「はいよ」
小笠原課長が注文してくれ、私はお冷に口を付けて一息つく。
「今日は啓介の世話で疲れただろ」
「少し……でも、楽しかったです」
「三歳児のパワーはすごいな。滑り台もいったい何回滑ったんだろうな」
滑り台のことを思い出すだけでどっと疲れが出てくる。
「ホントですよね。絶対に筋肉痛になると思います」
「風呂に入ってしっかりとマッサージしないとな」
「そうですね」
私は苦笑いする。
いつもはシャワーで済ませるけど、今日はちゃんと湯船にお湯を張ろうと思った。