君に捧げる一途な愛
「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです」
メンチカツはジューシーで、小笠原課長が絶品だというのも頷ける。
すごくボリュームたっぷりでお腹いっぱいだ。
「それはよかった。また、いつでも連れて行ってあげるよ」
❝また❞というのはあるんだろうか。
社交辞令だと思い、私は曖昧に頷いた。
小笠原課長は家まで車で送ってくれると言ってくれたけど、それは丁重にお断りした。
そこまでしてもらうことはないと思ったからだ。
でも、小笠原課長も『夜に一人で帰らせるわけにはいかない』と一歩も引いてくれなかった。
今からマンションに戻ってわざわざ車を出してもらうのは申し訳ないと言って私も譲らなかった。
頑なな私の態度に小笠原課長が折れてくれ、『それなら駅まで送る』と言われて話が付いた。
駅のロータリーに車がハザードを付けて止まる。
私は助手席のドアを開けながら、お礼を口にした。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう。そうだ、約束通り弁当のお礼はさせてもらう」
「いえ、そんなことをしてもらわなくても大丈夫です。今日もご馳走になってますし」
あの言葉、まだ覚えていたんだ。
お礼なんてしてもらわなくても十分だ。
「そうはいかない。それに、今日の食事代は比嘉部長もちだからな。また連絡する」
真っ直ぐに見つめながら言われ、私はこれ以上断ることが出来なかった。
「気を付けて帰れよ」
そう言うと、ハザードランプが消え車が動き出した。
私は車が見えなくなるまで見送った。