君に捧げる一途な愛

「お疲れさまです。頼まれていた商品、持ってきました」

「ありがとう。早かったね」

小松さんに持ってきた段ボールを渡す。

「早い方がいいかなと思いまして」

「助かるよ。この前、物流の茶髪の男性が荷物を届けてくれた時は時間ギリギリだったんだよね」

茶髪の男性……たぶんその人は入社一年目の合田翼くんだ。
緩いパーマをかけ、愛想がよく少し軽い感じの人。
コミュ力高めで、誰とでも距離を縮めるのが得意と言っていた。
私なんて、『志乃りん』と勝手にあだ名をつけられて呼ばれている。
一応、私は先輩なんだけど。

「すみません。次からは早めに行動するように伝えておきます」

軽く頭を下げ、営業のフロアを出ようとしたら「ちょっと待って」と呼び止められた。
振り返ると、営業部の立花課長がすぐそばに立てっていた。

「君、物流部だよね」

「はい、木下です」

「木下さん、悪いんだけどこれ新規の受注リスト。配送の手配をしてもらってもいい?」

「承知しました」

立花課長から受注リストの入ったファイルを受け取り、頭を下げて営業部のフロアを出た。

こんなに間近で見たのは初めてだったけど、立花課長って次期社長になる人なんだよなぁ。

うちの会社は実力重視で役職が決まるので、若くて課長になることがある。
仕事に対するモチベーションも上がるだろうし、いい人材が思う存分能力を伸ばすことが出来る。
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