君に捧げる一途な愛
「志乃がプライベートで小笠原課長と一緒に過ごしたなんて驚きだわ」
「私もビックリしたよ。小笠原課長が来るなんて知らなかったから」
「あはは。それで、志乃の手料理を振る舞った、と」
「振る舞ったとか大袈裟だよ。お弁当を食べてもらっただけだし」
あれは振る舞ったとは言えない。
「で、どうだった?堅物課長は」
からかいまじりに聞いてくる。
由香も博美が同期会の時に小笠原課長のことを愚痴っていたのを耳にしている。
博美ならまだしも、由香の口から堅物課長とか言われると違和感しかない。
「全然堅物じゃなかったよ。優しかったし、笑顔が素敵だった」
「やだ、惚気?」
「そんなんじゃないよ。比嘉部長の息子さんに向ける笑顔が優しかったんだよ」
ニヤニヤしながら発した由香の言葉を即座に否定し、私はシャンディーガフに口をつける。
「あのシャッフルランチの出会いから、一緒にご飯を食べに行くまでになるなんて人生なにがあるか分からないもんだね」
「うん。でも、今回はたまたまで、そんな偶然は二度とないよ」
私と小笠原課長とは接点がない。
仕事以外で会うことは絶対にないんだ。
「えー、でもまた弁当のお礼にご馳走するって言われたんでしょ」
「社交辞令だよ」
小笠原課長が話の流れで言っただけだ。
あれから一週間経つけど、いまだに連絡がないというのはそういうことだ。
社交辞令を真に受けるほどバカではない。
「そうなのかなぁ。私としては本当に行ってほしいけど」
由香の言葉に私は黙り込む。